ウード (Ud)(Oud)

アラブの琵琶です。

フレットレスで 6コース、11(12)弦。アラブ音楽では楽器の王様(女王)として知られるウード。

中東から北アフリカのモロッコにかけて分布し、形や装飾は各地方で異なる。

ペルシア起源のウードは、ウマイア朝やアッバース朝の時代に器楽の合奏や歌の伴奏の中心楽器になり、その後シルヤブ(ズィリアーブ)によって、アンダルシアのコルドバからヨーロッパに伝えられ、リュート、ギターへとつながっていきます。。



ウードは大きく分けて装飾の多いイラクやエジプトのもの(弦長600mm程度)と、小ぶりなトルコのもの(弦長580mm程度)に別けられます。
、、、といっても、イラクとトルコの間の国 シリアでもウード演奏はさかんなので、なんとも云えませんが。
(私のウードはイラク製。)

エジプトより西のチュニジア、アルジェリア、モロッコにもウードはたくさんあります。
(自分の楽器はイラク製ですが、モロッコ人の先生がモロッコで選んで買ってくれたものです。)


木の材質と密接の関係があるギターと違って、砂漠で木の少ないアラブ圏の楽器ウードは、その膨らんだ裏板を20枚程度のかたいカエデやクルミの寄木細工で作ります。その結果、まろやかで深みのある低音を鳴らすことができます。


モロッコの音階に比べて西の国へ行くほど、いわゆるエキゾチックな感じになっていきます。

チューニングはいろいろありますが、多いのは1弦から5弦までを複弦にして、6弦だけを単弦にするやり方です。(私は6弦まで全て複弦にする場合もありますが。)

5弦をギターの6弦と同じように ミの音にして、1弦まで全て4度チューニングにしてます。

そして6弦は曲にもよりますが、だいたい5弦より1音低いレの音。
つまり6弦レ、5弦ミ、4弦ラ、3弦レ、2弦ソ、1弦ドです。


スタジオ風景



調弦の例

モロッコ
1弦:ド
2弦:ソ
3弦:レ
4弦:ラ
5弦:ミ
6弦:レ


トルコ
1弦:ソ
2弦:レ
3弦:ラ
4弦:ミ
5弦:レ
6弦:ラ


 

ウードのチューニング

ウードはその国や地域による違い、楽器の大きさの違い、アンサンブルや独奏など演奏形態による違いなどから、たくさんのチューニングの仕方があります。
しかし高音弦の4コース(1弦から4弦)は必ずと言っていいほど4度のチューニングになっています。

1弦:C(ド)
2弦:G(ソ)
3弦:D(レ)
4弦:A(ラ)


2度高いチューニング
1弦:D(レ)
2弦:A(ラ)
3弦:E(ミ)
4弦:B(シ)


4度高いチューニング
1弦:F(ファ)
2弦:C(ド)
3弦:G(ソ)
4弦:D(レ)


5度高いチューニング
1弦:G(ソ)
2弦:D(レ)
3弦:A(ラ)
4弦:E(ミ)

低音弦の2コース(5弦と6弦)は低音でドローンの鳴らしたい音やマカーム(アラブ音階)などによって変化します

高音弦が下記の場合の代表的な低音弦のチューニング例を5つ紹介します。
1弦:C(ド)
2弦:G(ソ)
3弦:D(レ)
4弦:A(ラ)


①5弦を4弦より2度低くして、6弦を5弦より4度低くしたチューニング。
5弦:G(ソ)
6弦:D(レ)


②上記のチューニングで6弦をさらに2度低くしたもの。
5弦:G(ソ)
6弦:C(ド)


③1弦から5弦まですべて4度チューニングにして、6弦だけ2度下げたもの。
5弦:E(ミ)
6弦:D(レ)


④上記のチューニングで6弦をさらに2度低くしたもの。
5弦:E(ミ)
6弦:C(ド)


⑤上記のチューニングで5弦を4弦より4度高くしたもの。
5弦:F(ファ)
6弦:C(ド)


各国のチューニング例

ウードのチューニングは、大きく分けて低音域のアラブ全域のものと、高音域のトルコのものの二種類に大別できます。低音(6弦)から高音(1弦)の順番にチューニング表記してみました。

アラブ風のチューニング

D G A D G C (特にエジプトやシリアでアンサンブルの伴奏やベリーダンスの伴奏時の一般的なチューニングです。)

C G A D G C (上記のチューニングで6弦だけ更に1度下げたもの。)

D E A D G C(モロッコやチュニジアなどのマグレブ諸国で一般的なチューニング例。)

C E A D G C(上記のチューニングで6弦を更に1度下げたもの。低音域で伴奏向き)

C F A D G C(上記のチューニングで5弦を6弦の4度上にチューニングしたもの。これも主要チューニングの一つ。)

G A D G C F(イラクの独奏スタイルやヨーロッパに近づくと全体的に高くした響きのいいチューニングが目立ちます。)

F A D G C F(上記のチューニングで6弦だけ更に2度下げたイラク式のもの。高音域中心の技巧的演奏法が多い。)


トルコ風のチューニング

E A B E A D(現代のトルコやアルメニア式のチューニング。全弦がアラブ式の1音上げ。)

D A B E A D(上記のチューニングで6弦だけ更に1度下げたもの。)

D G B E A D(上記のチューニングで5弦を6弦の4度上にチューニングしたもの。)

C# F# B E A D(低音弦を下げて音域を広げた迫力のあるトルコ・アルメニアチューニング例。)

A D E A D G(全体的に高音域。伝統的なオスマン・トルコ時代のチューニング。)

A B E A D G(モロッコの一般的チューニングから全弦を5度上げたもの。)

F# B E A D G(6弦F#から1弦まですべて4度間隔にしたチューニング。)

この他、トルコでも特にアンサンブルの伴奏の時など、アラブのものと同じ下記のような低音域のチューニングで演奏されることもあります。
D E A D G C



Casa de Memorial (Sevilla) で撮影
一番右の擦弦楽器はラバーブ
大きい方の太鼓はベンディール
小さい方はタール
下に写っている笛はガイタ(ズルナ)

 

ウードの弦

弦は、最近ではクラシックギター用の弦と同じ材質のナイロン弦や銅の巻弦を使ってます(大昔は羊の腸や絹糸などを使っていたようです。)が、ウード専用の弦があります。
スペインとモロッコでしか買ったことがないので 日本で購入できるかわかりませんが、フラメンコギターでよく使っているラベラ(LA Bella)のウード用か、PYRAMID というドイツ製のウード専用弦を使用しております。

 

 

リーシャ

ウードを弾く撥(バチ)は、アラビア語で鳥の羽の意味の「リーシャ」と呼ばれています。
トルコ語では「ミズラプ」、スペイン語では「プーワ」、英語では「ピック」または「プレクトラム」。

エジプトの水牛や牛、アフリカに生息する鹿の一種ガゼルなどの角を薄く切って加工するそうですが材質の詳細はよくわかりません。
自分は牛の角でできた14cmほどの長さのリーシャとプラスティック製の13cmのリーシャを使っています。
その他、鷲(ワシ)の羽の軸で作る、比較的優しい音がするリーシャもあります。
ものの本によると、鷹の羽の軸や三味線撥のようにべっ甲なども使用するみたいですが私は使用したことがありません。
日本ではクジラの髭のリーシャも存在します。
リーシャは好みにあわせて、その先端部分を紙やすりなどで削って使います。



左の4本はPYRAMID社のプラスティック製リーシャ。
右の6本は牛の角を薄く削って作ったリーシャ。


Profile / 片桐勝彦

'90年、シリア北部の都市アレッポでウードの生演奏を聞きアラブ音楽に興味を持つ。

'98年から2000年までのスペイン滞在中、モロッコ人ウード奏者 Amin Chaachoo にアラブ音楽理論とウードを学ぶ。

民俗音楽グループ「ちりくマルカ」メンバー。


Amin Chaachoo モロッコ人ウード奏者(私の先生)
2000年11月30日 (Sevilla)


 

主なウード演奏記録

2001,10/ 7 :愛はむらさき-源氏物語のおんなたち(桐生:鳳仙寺)

2001,12/15:第4回 アルハンブラの想い出をひく会(松戸:市民劇場)

2002, 5/19: 野村裕子スタジオコンサート vol,2(桐生:市民文化会館)

2002,12/ 6: 第5回 アルハンブラの想い出をひく会(松戸:市民劇場)

2003, 5/ 5: 吉敷ギター教室発表演奏会 35周年(松戸:市民劇場)

2003, 7/25: 男たちのアルテフラメンコ(水道橋:プレステージ)

2003,12/12:第6回 アルハンブラの想い出をひく会(松戸:市民劇場)

2004, 2/21 :男たちのアルテフラメンコ vol,2(水道橋:プレステージ)

2004, 7/ 9: 男たちのアルテフラメンコ vol,3(水道橋:プレステージ)

2008,11/30:ANIFERIA ギター・カンテの祭典(中野:ZERO大ホール)

2020, 5/12:セビジャーナスつなぎ(東長崎:Estudio ROMERO)